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中田島と御前崎のほぼ中間の地点にある大須賀の自転車道。 人の出入りがはげしいので聞くと、鯨が海岸に打ち上げられているという。海岸に出てみると、人が大勢いて、一人がホースを使って鯨 に水をかけている。鯨を救い出すためにパワーシャベルまで来ている。 鯨は水族館にもいないので、この時はじめて見たわけだが、さすが大きい。 写真に撮ろうと近づくと、「邪魔だ、邪魔だ。」と、怒鳴られる。殺気だっている。正直言って、一瞬、むっとする。 だが、脇に退いて、鯨を助けようとしている姿を見ていると、さすがその熱心さには頭が下がる。「鯨を食べる野蛮な日本人」「エコノ ミックアニマル」などと言われる日本人ではない。日本の庶民はやさしいんだ、と 感心。 だが、その時、ふと、「もしこれが鯨でなく、普通の魚だったら」と 、思った。「放っとかれるよな。」 急にさめた気持になる。先程怒鳴られたのがよほど根にあるらしい。そして、「色即是空 空即是色」 、わかったような言葉を残してその場を去った。 翌日、鯨が死んだことを知った。 「色即是空 空即是色」、今度はしみじみこの言葉をかみしめた。
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