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お菓子 遠足の日でした。少年はおむすびと水筒を持って出かけました。お菓子は持っていませんでした。言えば母親も少しぐらい買ってくれたでしょうが、少年は言いませんでした。そんなにゆとりがないこと を知っていましたし、それほど欲しいとは思はなかったからです。
皆で一緒に食事をしていた時、一人の友達が見せびらかすようにお菓子をつまんでいました。「欲しいだろ。」 友達は得意げに、少年に言いました。少年はそれにつられて何気なく、「うん。」と、言ってしまいました。それを聞くと、その友達は「あかんべー。」と、言って立ち上がると、さっさとそこから離れていきました。くれる気は全くないのでした。少年はそれほど欲しくはなかったのですが、「やらないよー」と、わざと言われると、なんだか「貰わなくちゃ」という気持ちになってしまい、意地のように友達の後をついていきました。そのうち、友達はいい加減な所で、後ろを振り向くと「欲しけりゃ、買ってこいよ。」と
、言って
、大きな声で笑いました。少年ははじめて立ち止まって、友達を黙って見返しました。少年が立ち止まるのを見ると、友達は一目散に駆け出して逃げて行きました。 ふと、気が付くと、知らない女の子がすぐそばに立っていて、「このお菓子、あげる。」と言って、ポケットからお菓子を差し出しました。それは、あの友達が見せびらかしていたのと同じお菓子でした。でも、少年はちらっとそれに目をやりましたが、黙ったまま、ただ、友達の行った先を見つめているばかりでした。 それから少しして、少年が、ふと、われにかえって、女の子の方を見た時、女の子は、もう、そこにはいませんでした。多分、お菓子を自分のポケットに戻し、少年のもとを、そっと、去って行ったのでしょう。
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